2006-03-24 14:02:12
蟲師「筆の海」 [ 蟲師 ]
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遂に最終回になってしまいました。普通に最終回なら名残惜しいだけだけど、まだ続きがあるのに4月の番組改編期だからって事で、バッサリ切られてしまうのは納得行きませんね。蟲師を途中で切って、一体どんな番組を始めようってんだ?。26話までやると4月を過ぎる事なんて最初から分かってたでしょ!?。フジテレビには、番組を見ている人を大切にしようって気持ちがないみたい。そんなことより編成の方が大事なんだろうな。
テレビ局の態度とは裏腹に、番組のクオリティは最後まで驚異的なハイレベルを保ってます。地上波最後のお話は、ギンコが蟲に関わった人を何とかするっていういつもの話とはちょっと違ってました。
「蟲に身体を侵食されながら、蟲を愛でつつ、蟲を封じる。そういう娘がひとりいる」。
ギンコがやってきた荒れ地の中の一軒家。何となく家の作りが中国風ですね。こんな殺風景な荒れ地も珍しいし。小さな木枠の窓が開いて仏頂面の老婆が顔を出します。なんか、気難しそう・・・。こんな婆さんに睨まれたら一秒でも早くここを立ち去りたくなってくるけど、ギンコは飄々としてますね。それにはちゃんと理由が。
この家の地下には、蟲に関する大量の資料が納めてあります。その資料を見せてもらうこともあるんだけど、本当の理由はここの娘、大量の資料を編纂している狩房淡幽ちゃんに会うことです。スミにおけんね、ギンコも。
この淡幽ちゃん。ただ蟲に関する事柄を編纂しているだけではなく、なにやら運命的に重たいものを背負っているようです。
「その昔の大天災の折、動植物も蟲も衰え行く中、異質な蟲が現れ他の全ての生命を消さんとしたのです」
すべての生命を消そうとした蟲ってどんな蟲だったんでしょうね。それである一人の蟲師が自分の身体で蟲を封じ、その代償に全身墨色になった。封じられた蟲は蟲師の体内で生き続け、その蟲師は子供を産んだ後亡くなったそうです。それ以後、狩房家には何代かに一度墨色の痣を持つ子が生まれるようになり、体の中に宿った蟲を封じるために、いろんな蟲師が蟲を封じた話を書き留める事になったそうです。
なんだかナウシカみたいな英雄が、でっかい異形の蟲に立ち向かって壮絶な戦いの末、自分の体の中に蟲を封じ込めたって話なんだけど、それだけで一つの物語になりそうな壮大な話ですね。
淡幽は黒い痣を持って生まれた四代目の筆記者で、最初は全身真っ黒だったのが、何代にも渡って蟲を封じる書物を書き記したおかげで、淡幽の痣は右足だけになっています。
淡幽は最初身の回りの世話をしてくれる婆さん、薬袋たまが昔蟲師として活躍していた頃の話を聞いて書き写していたものの、たまの話が尽きると、方々から蟲師を招いて蟲を殺した話を聞いて書き写さなくてはならなくなります。
ギンコ以外の蟲師をあまり見ないので、蟲師ってみんなギンコみたいに飄々としているのかと思ったら、そんなことはないんですね。蟲を悪者にして、正義の戦いをしているように威張っている人なんてのがいるんだね。いかにも力業って感じ。
蟲を殺す話ばかりで気が滅入っている淡幽に、ギンコは「じゃあ、殺さねえ話な。まずはホクロを喰う蟲の話を・・・」と半ば強引に役にも立たない話を聞かせてくれます。
教訓!。「女性に対して自慢話をするな。ホッとする話で気を紛らわそう」。
ギンコが地下の資料室で書物を見ていると、紙の上のシミが動き出し、封じられた蟲が出てきます。「文字列が崩れ始めている!」。慌ててたまを呼ぶギンコ。紙の上でウニョ〜ンと文字が歪んでいったかと思うと、そこら中から墨で書かれた文字が蛇のように溢れてきましたよ。
うわぁ、こんなに文字が出てきて大丈夫なのか!?。地下の書庫からはい出した文字達は淡幽の部屋の壁一面に張り付いてうごめいています。慌てるギンコに比べて淡幽は平気な顔。
「なに、この部屋からは出られん。私にだって、できる蟲封じはあるのだぞ」
淡幽はそう言うと、長い箸で文字列をつまむと、各章の名前を唱えながら紙に写していきます。今まで編纂した書の内容はすべて憶えているってところがすごいじゃないですか。はっし、はっしと文字を捕まえては書に貼り付けていく淡幽。どうやら紙はいつかすり減っていくものなので、いつか移し替える作業が必要と分かってやってる事みたい。それに書の中で動いているシミは、淡幽がかわいがってわざと残している蟲らしいです。長いこと書を編纂し続けていると退屈になってくるのかも。それで退屈しのぎにシミを飼っているのか?。「またそれは危険な遊びを・・・」。いやまったくです。
書を書いて蟲を封じているところもすごかったです。筆で書くのかと思ったら、全身に文字が浮かび上がってきて、それを指で書に写していくって感じ。さながら耳なし芳一の如し。
書に蟲を封じるときは、ものすごく痣が痛むようで、ギンコは疲れ切った淡幽をおぶって荒れ野に出かけます。この時のギンコと淡幽の会話が良かったですね。淡幽はいつ終わるとも知れない蟲封じを続け、自分が死ぬまでに右足の痣が消えなければ、その作業は子孫に引き継がれることになる。先が見えない作業のなかで、あてのない希望を口にしてみる淡幽です。
「オマエと、旅に出たいな。話に聞いた蟲を見たい、なんてな。よくてもその頃、私は老婆だがな」。
「うーん」。
「冗談だよ」。
「いいぜ。それまで無事、オレが生き延びられてたらだがな」。
「生きてるんだよ」。
「いや、明日にでも蟲に喰われてっかもしんねえし」。
「それでも生きてるんだよ」。
「ムチャ言ってんな」。
「何とかなるさ」。
ちゃんと受け止めてくれてるギンコ。いいですね〜、この二人の会話。しっかり約束するでもなし、なにかを確かめるわけでもないのだけれど、二人の間にはお互いに対する思いやりに溢れてます。こんな風にさりげなくお互いを大切にするような関係になれたらステキですね。
優しい余韻を残して終了した蟲師。いつか残りの分も地上波で放送してほしいです。
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蟲師「筆の海」 | Permalink | コメント(290) | Trackback(0)
2006-03-17 11:02:59
蟲師「天辺の糸」 [ 蟲師 ]
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いいところのお坊ちゃん清志朗と、清志朗の家で子守に雇われた使用人吹のお話。珍しくハッピーエンドのラブ・ストーリーでしたよ。
出てきた蟲は「天辺草(てんぺんぐさ)」。ぺんぺん草?、いえ天辺草。空高くさまよっていて空気中の光を帯びた蟲を食べているんだけど、餌に困ると糸を垂らして獲物を釣り上げるそうです。吹が空から垂れている糸を何だろうと思って引っ張ると、いきなり空に引き上げられてしまいました。こわ〜。
空から糸が垂れているのって、なんだかシュールですね。吾妻ひでおの不条理マンガみたい。「あの糸の先にはすばらしい世界が待っているのよ!」って登っていきたくなってしまいそう。
いなくなった吹を村中で捜してまわるけど見つからず、結局吹は子守が嫌になって逃げ出したんだということにされてしまいます。清志朗が見たままのことを話しても、「どうせならもう少しまともな言い訳をしてやってください」と同情される始末。仕事が嫌で逃げ出す使用人って珍しくなかったのかも。
吹は木の上にいるところをギンコに発見されます。ギンコの話じゃ、天辺草が飲み込めなかった餌は空中に放り出されて、地面に落ちて死んでしまうこともあるそうです。吹は木に引っかかって助かったんだそうな。ますますもって怖い蟲だな。
天辺草に飲み込まれようとしたとき、吹は蟲に近い存在になってしまっています。それで村人に見つからなかったみたい。ギンコが差し出す薬を飲んで、少しずつ輪郭がハッキリしてきました。髪の毛が逆立つほどマズイ薬って、一体どんな味なんだ。
吹は次第に記憶を取り戻し、里の場所を思い出して帰ってきます。村人から「もう別の子守を雇っている」と聞いて狼狽える吹だけど、すかさず清志朗が「なら、オレの嫁として戻ってくれ」。
おおっとー!、突然のプロポーズだ!。これは吹のハートを鷲づかみだぜ!。決めたな、清志朗。
ここまでは格好良かったんだけど、なにせいいとこの坊ちゃんだから、苦労ってものを知らないな。親父に吹との結婚を認めさせることができると思ってるところが甘ちゃんなんだよね。
ギンコは吹が完全に人に戻るには、薬も大事だが吹自身が「人でいたい」と思う気持ちが大事なんだと語ります。
「アンタがそう思わせてやるんだな」
清志朗は「近いうちに祝言を挙げる」と自信満々。見ているこっちが、そう簡単にはいかないだろうと心配になってきますが、清志朗はギンコに祝言に出てくれと頼んでます。
そして月日は流れ、ギンコの元に届いた手紙は吹がいなくなったことを告げるものでした。
まあ、当然の流れと言えばその通りなんだけど、親父はなかなか二人の仲を許してはやらなかったんだな。多分清志朗は親父を説得する過程で、「吹がいなくなったのは蟲にさらわれたせいで、吹の落ち度じゃない。今はちゃんと元の人間に戻っているから大丈夫だ」と言い続けたんだろうな。
だけどそれは「吹は元どおりだから、結婚しても大丈夫」という主張で、「吹は元どおりじゃないけど、二人で協力してやっていくから結婚しても大丈夫」ということではない。ギンコが清志朗に言った「誰よりあんたが、今の吹を受け入れられずにいるんだな」という言葉はそういうことなのでしょう。
「清志朗にふさわしい嫁でなくては、結婚を認めてもらえない」というプレッシャーも吹を苦しめたでしょう。そのためには普通でなくてはならないと焦れば焦るほど、「人でありたい」という思いは「人であらねばならない」に変わっていき、「普通ではない」自分を否定する結果になっていきます。
吹はドンドン軽くなって、強風でも体が舞い上がるようになり、部屋の梁につかまっていないと飛んでいってしまいそうなくらいになります。清志朗は吹の足を柱にくくりつける所まで来ますが、吹はいなくなってしまいました。体をつなぎ止めておくためとはいえ、体を縛るなんて事はやっちゃいけなかったんでしょう。
ギンコから、「吹は見えなくてもここにいる。吹を最後につなぎ止めているのは、アンタなんだろうな」。梁の上で半透明になりながら座っている吹は何とも哀れですね。
夜空の星を眺めて、以前自分が言った「夜空の星は昼間は見えなくてもちゃんとそこにあるんだ」という言葉を思い出した清志朗。な、な、なんと強行策に出ました。
誰にも見えない嫁を据えて祝言を強行。見えない嫁に話しかける清志朗。親戚達はみんなヘンな顔をしてます。そりゃ思うだろうな〜、坊ちゃん、とうとうおかしくなりはったって。
でもよく親父が了承したもんです。家の恥をさらすようなもんでしょ。見えない嫁と祝言を挙げるなんて、うちの跡取りはおかしくなっちまったよ〜って村中に知らしめてしまいました。
案の定、清志朗は家を継ぐことはなく、村はずれに家を建ててひっそり暮らしています。ずっと見えない嫁に話しかけて。村人もそんな清志朗に近寄ろうとはせず、付き合いも途絶えていったようだけど、いつしか吹の姿は見えるようになり、その後吹が姿を消すことはなかったようです。
「負けないことさ、いつでも最後に愛は勝つ!」
そんな歌を地でいくようなお話でした。ハッピーエンドでよかったけど、私には無理だな。村中に後ろ指指されて、見えない嫁と結婚生活は送れないよ。そんな自分を知っているから、見終わった後「よかった、よかった」という気分にはなれませんでした。でも、悲しいラストを見せられるよりは良かったのかな〜。
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2006-03-10 13:39:09
蟲師 「山抱く衣」 [ 蟲師 ]
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今回はいつもとちょっと趣が違ってましたね。ストーリーの中心に蟲がいなくて、味付け程度に出てきたような気がします。あくまでストーリーの中心は、故郷を出て有名になった絵師の塊が、スランプになって故郷に帰ってみると故郷は荒れ果てていて、今までの無沙汰を悔いて里に住み着き、また元気を取り戻していく過程です。
出てくる蟲は「産土」。それぞれの土地に固有のものが住んでいて、その土地でしか生きれない。塊の故郷が地滑りで流された時に、山の素材で作られた塊の羽織に身を寄せて、羽織に描かれた山から煙が上るように見えたのでした。
塊は絵師になることを親に許されたわけではないようですね。でもどうしても絵師になりたくて、半ば故郷を捨てるように弟子入りしたようです。持っていくものは姉が故郷のものだけで作ってくれたという羽織だけ。
有名な絵師について修行を積んでいたものの、来る日も来る日も下働きだけで、絵のことを教えてもらえるわけではありません。この辺り、昔の修行って大変だったんだなあって気がします。技術は自分で盗まなくちゃならず、誰も親切に教えてくれるなんて事はあり得ない。そこからすると、この師匠は塊が羽織りの裏に描いた山を見て塊の才能を見抜き、「明日より画室へあがれ」と言ってくれたので、見かけほど悪い人じゃないんだなと思えました。
「気に入らんぞ、この絵は気に入らん・・・」なんて渋々言ってるところが笑える。
メキメキ頭角を現した塊は仕事がドンドン舞い込んで、いちいち催促の手紙なんか読んでられない状態になります。描けば売れる中で、「ある村が地滑りで潰れた」という話を小耳に挟みますが、すぐに忘れてしまいました。
このころからだんだんスランプに陥ってきて「どこかお加減でも悪いのかな?。以前見た絵はまさに生命みなぎるといったような・・・」と言われる始末。医者からは疲れているだけと言われますが、気分転換に塊は故郷に帰ってみることを思いつきます。これだけ有名になったんだから、絵師になることに反対だった親も許してくれるだろうという気持ちもあったのでしょう。
久しぶりの故郷に弾む心も、目の当たりにした惨状に塊は立ちつくしてしまいます。以前小耳に挟んだ地滑りで潰れた村というのは自分の故郷だったのでした。父は地滑りで死に、姉も子供を産んだ後1年後に死んだ。村では絵師として有名になった塊に助けてもらおうと便りを出したが、音沙汰なかったようです。
多くの催促の手紙に紛れて燃やしてしまったんでしょうね。知らなかったとは言え、村としては助力の願いを無視されたと思ったでしょう。帰ってきた塊に村人は冷たく、塊は絵を描く気力もなくなり、村で一人暮らすのでした。
村の食べ物を食べているうちに元気を取り戻す塊。これも産土の効果なんでしょうか。生まれてからずっと産土を口にしていると、それが途絶えると体調を壊すみたいだから。姉の娘を育てていた叔母が亡くなり、塊はその子を引き取って育てます。そのうち村人ともうち解け、何とかやっていけそうな雰囲気になってきました。
そんなとき、山に煙が上がっているのを目にします。昔子供の頃見かけた光景。湯気が上がっている場所に行ってみると、泡立っている地面から土にまみれた人間が現れました!。
ビックリしただろうな〜。怪奇土人間の正体はギンコでした。
「あー!、くそっ、死ぬかと思った」
「なんだ、あんたは?」
「いや、別に怪しい者じゃ・・・」
思いっきり、怪しいよ。
産土が抜けたのか、重かった羽織は軽くなっています。自分の羽織を見つけた塊はギンコから羽織を譲り受けます。化野に売りつける目的で買った羽織なので、ギンコもただではくれてやれません。条件として新しい羽織に山の絵を描いてもらいました。って偽物作ってるんじゃないの?。
絵を描く塊に姪のトヨが「お山〜、もっと描いて〜」と寄ってきます。なんかいい雰囲気だな〜。成長が遅れているトヨにも幸せがやってきそうな感じ。
偽の羽織を化野に売りつけるギンコ。蟲師とて霞を食って生きられない。食うためには商売しなくちゃならぬ。
「ごくたまに絵の山から煙が出るそうだ」
偽物だから出ないでしょ。
「どのくらいででるんだ?」
「さあ10年に一度くらいじゃないか」
「待ち遠しいな〜」
完全に騙されてますね、化野先生。
「まっ、死ぬ思いした訳だし、これくらい許されるだろう」
どこがどう許されるのか、まったく分かんないけど、そもそもこういったものに金をつぎ込むところからして、騙されたって文句は言えないけどね。だいたい騙されたかどうか判定するのは難しいし、それは最後まで分からないでしょうから。
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蟲師 「山抱く衣」 | Permalink | コメント(25) | Trackback(0)
2006-03-03 20:38:18
蟲師「虚繭取り」 [ 蟲師 ]
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いつも奇妙な蟲達が登場する「蟲師」だけど、今回はいつもにまして奇妙でした。普通は人間の生活に、人知では考えられないような作用を及ぼしている蟲を、今回は人間が利用して便利なものとして扱っています。そのあたりがいつもと少し趣が違う所以かも。
「ウロさん」と呼ばれる蟲がいます。このウロさんの性質を利用して、メールのような機能を持たせています。離れたところにいる蟲師に文のやり取りをする便利な蟲。
「普通、繭は1本の糸でできているが、玉繭は2匹で作るから2本の糸でできている。そいつをバラしてふたつの繭に作り直すが、部屋全体が薄くなるんでウロさんが混乱して出てくる。ウロさんは当分このふたつの巣の間しか行き来できなくなる」
その繭を両者で一つずつ持っていて、片方の繭に文を入れれば、ウロさんがもう片方の繭に文を届けてくれるというわけです。なんて便利!。得体の知れない蟲なんて気味悪がって敬遠するところなのに、その蟲さえも便利さを求めて利用するなんて。人間のたくましさは蟲をも凌ぐって所でしょうか。
綺と緒の双子の姉妹は、代々続くウロ守の一族に生まれます。長年ウロさんを見る能力を持った子が生まれなかったところに、綺と緒は久々に生まれた能力者でした。本家の爺さんは、どちらかを跡継ぎにするため、10歳になった時、どちらかを連れに来たのですが、仲の良い二人を別々にするより二人一緒がよかろうと、二人を爺さんの家に連れていき、ウロ守としての修行をすることになりました。
「ウロさんってのは、現世に風穴を開けてまわる恐ろしい蟲なんだ。この辺りはウロさんの湧きやすい土地でな。密室を見つけては湧いて出る。だから部屋の戸は閉じちゃならん。誤って戸を閉めちまったら開けてはならん。開けてもしウロさんが中にいたら、逃げ出すウロさんと共に、ウロ穴に取り込まれちまう。ウロさんは密室の外に長くいられんものだからな」
なんだか恐ろしいですね。部屋の中の戸をすべて少し開けておいて、閉めちゃダメなんて、とても守れそうにないですよ。でもこの爺さん、「ワシもこの年までやってこれたから大丈夫」なんて言ってます。
爺さんの言葉にもかかわらず悲劇は起きました。緒が縁側でうたた寝をしてしまったとき、洗濯物の布がはずれて緒に被さってしまいます。そこは密室となり、ウロさんが。緒を捜していた綺が布をめくると、ウロさんと一緒に緒も消えてなくなりました。
跡形もなく消えてしまった緒を見て、綺はショックだったでしょうね。自分のせいでいつも一緒に生きてきた緒がいなくなってしまったなんて、考えただけでも胸が潰れます。
「おまえのせいじゃない」と言う爺さんですが、「助ける術はないんじゃ」と頭を抱えます。孫が消えてしまった爺さんの心もまた悲痛です。
綺は一人でウロ守になり、この時からずっと緒宛の文を出して緒を捜し続けています。その様子を見たギンコは「あれから5年になる。もう諦めろ」と綺を諭します。ずっと自分のせいで緒がいなくなったと、自分を責め続けている綺のことを心配している様子。「蟲師」には、よくこうした過去に囚われて前に進めない人が出てきますね。その人達にギンコが言うのは、大抵「もう○年になるんだろ。そろそろ自分のことを考えてもいいんじゃないか」っていう言葉です。
ギンコは綺に現実を見せるためか、ウロ穴の中がどうなっているか見せることにします。大木の幹にでっかい触手が集まったような所があり、そこがウロ穴だとか。触手をかき分け、この中に入っていくなんて、うえええ、気持ち悪い。できたら入りたくないな。ウロ穴と外の世界をつなぐのは1本の鎖だけ。最初この鎖はギンコが用意しいた物かと思っていたら、昔の蟲師が作った物らしいです。すごいぞ昔の蟲師!。抜け穴にするためにウロ穴に鎖を付けるなんて、人間の好奇心は留まるところを知りません。
あっちこっちに暗い穴が無数に通じていて、どこに通じているか分からない。とても緒を捜すどころではない、自分の無力さを痛感させられる光景です。
「おまえの中のでっかいウロの口は塞げ。戻ってこれなくなる前に」
どうしようもない現実を突きつけられて、涙を流す綺。緒のことを忘れることはできなくても、緒を助け出すことだけを考えて、それだけに縛られて生きることは綺のためにならない。綺は綺で自分の幸せを考えて生きてほしいというのがギンコの願いでしょう。
この話には後日談があって、数年後、老婆が繭の糸を紡いでいたところ、繭から緒が出てきたのでした。小さな白い繭から指が出てきて、文を持った娘が現れたのは驚きですね。ひっくり返って腰を抜かした婆さん、さぞかしビックリしただろうな〜。
「人の子、繭より出り。齢十ほどにて言葉を得ず。後、懐の文をたよりに故郷へ戻りし」
緒はいなくなった子供の時のままの年で、言葉が話せなくなっていたようです。綺は二十歳前になっていただろうから、年の離れた姉妹になってしまったけど、再会できただけでもよかったんじゃないでしょうか。
二人の姉妹がかわいかったですね。しゃべり方がまたかわいいんだなあ!。大きくなった綺もボーイッシュでいいです。最初は男か女か分かんなかったけど。ゴメン、綺。
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2006-02-24 09:57:52
蟲師「暁の蛇」 [ 蟲師 ]
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「カゲダマ」という人の記憶を食う蟲の話。日の当たらない所にいて、うたた寝した人の耳から入り込み、生きていくのに必要な記憶は残し、少しずつ記憶を食べていきます。当然、記憶を食べられた人は、物忘れが異常に激しくなり、クシャミや、親戚の名前、息子の友達など、片っ端から忘れていきます。
今回出てきたサヨは、もともとおっとりした性格だったけど、最近病的に物忘れがひどくなり、夜眠らなくなったということで、たまたま瀬渡しをしていてギンコの話を聞いた息子のカジがギンコを家に連れてきます。
いきなり桶の上に飛び乗って、「変な生き物がいる!」と驚いているサヨさん。いやあ、かましてくれます。これが結構かわいかったりして。やられました。変な生き物は蟹。ギンコをカジの友達だったよねと言い出す始末には、いい味だしてます。このままでもいいんじゃないの?。
ギンコに泊まり込んでみてもらった結果、「カゲダマ」の仕業だろうという所までは分かりますが、カゲダマは日の光に弱いということしか分かりません。頭の中に日の光を当てるわけにはいかないので、治療法といっても、忘れて困ることは忘れないよう何度も確認し続けるしか方法がないということです。
「息子のことまで忘れてしまうことが恐ろしい」と言っていたサヨは、ギンコの話に勇気づけられたのか、なるべく外に出るようにすると思い、行商に出たきり帰ってこない夫を探しに行く決意をします。
その後サヨとカジがどうなったか、ギンコは一年後にこの家を訪ねて知ることになります。
夫はよく話していた西の方の町にいました。しかも他の女と所帯を持ち子供まで作って。
この姿を目にしたサヨはカジの手を引いて、無言で走り出します。理由を問いただしたいカジに何も言わせず、ただ歩き続け、そのうち疲労で倒れてしまったのです。
そしてお堂の中で目を覚ましたとき。サヨの記憶はすっかりカゲダマに食われ、夫が西の町で女と暮らしていたことなど、きれいに忘れてしまっていたのでした。
それ以来元通りに親子二人で暮らしているのですが、なぜか陰膳をするとホッとすると、憶えていないはずの夫に陰膳をするサヨの姿が、なんとも切なかったですね。
今回も切ない話で、救いがないと言えるかもしれないけど、蟲はただ存在しているだけと思えば、サヨの身の上に起こったことは、普通の夫婦に起こりうることと言えないこともないですね。
あ〜あ、なんで夫は他所の町で女と暮らし始めたりしたんだろうなあ。まさかサヨやカジのことを忘れちゃったわけでもないだろうに。一年中行商に出てたっていうことだから、西の町に行く間に仲良くなってたのか?。それで男と女の関係になって子供までできて、責任取らなくちゃならなくなったのかも。
そんな想像しても仕方ないんだけど、「ひまわり」って映画を思い出しました。あれはイタリアの兵士がロシアに攻めていって負傷し、現地のロシア女に助けられてそのままそこで所帯を持って暮らし始めたって話だったけど、似たような事情がこの夫の身の上にもあったのかな?。
いつかサヨとカジの元を訪ねて、事情を説明するつもりだったのか、それとも行方不明で通すつもりだったのか?。いずれにしても、いつも帰ってきていた時期に帰ってこないということは、もう帰らないと決断したって事でしょうね。それとも、もともとに西の町の所帯が先で、サヨは後から仲良くなって所帯を持っちゃったのかも。
カゲダマに記憶を食われてよかったのかどうか。蟲は人間のいいとか悪いとかとは関係のないところで存在しているので、何とも言えないですけど、ただサヨは夫のことを忘れてしまっただけで、夫が逃げてしまった傷を乗り越えたわけじゃないんだよね。忘れられたんだからそれでいいじゃないかって気もするけど、なんだか、人間の世の中って切ないことが多いよな〜って気がしました。
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2006-02-17 13:42:53
蟲師「春と嘯く」 [ 蟲師 ]
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今回はギンコの内面と言うか、人間くさいところが見られてホッとする回でした。普段クールで仏頂面なだけに、こういうところを見せられるとグッと来ますね。
雪深い山の中、歩くのにも難儀していたギンコは、雪に埋もれそうな民家に一泊の宿を求めます。
用心深そうに顔を出すスズがいいね。よく「道に迷ったので一夜の宿を」なんて話が出るけど、ホントに夜、人が来たら怖いよね。ギンコだけ現代風のコートを着ているので、時代がよく分からないけど、この姿で「一夜の宿を」と言われると、ちょっと違和感があります。
夜が明けた次の朝、ギンコは弟のミハルが蟲を捕ろうとしているのを見つけます。ミハルには蟲が見えるんだ。手当たり次第に蟲を捕まえるミハルを見て、「ミハルに害のある蟲を見分けられるように教えるくらないなら」と、しばらくスズの家に留まることになりました。
ミハルに蟲が見える用になったいきさつと、冬になると生えるはずのない山菜を採ってきて春になるまで眠ってしまうことなどを聞かされ、それは「春まがい」だと答えます。雪の中であるはずのない春の光景を作り出し、集まってきた生き物の精気を吸うという蟲。その「春まがい」をミハルが見つけて、冬になると山菜を採ってくる事は間違いなさそうです。
ギンコはミハルに蟲の種類を教えながら、かなりスズの家に居着いてしまったみたい。最初は「ギンコさん」と呼んでいたスズが「ギンコ!」に変わってますよ。スズのギンコに対するほのかな気持ちが切ないですね。いつかは旅立つ人。約束したわけじゃないので、いつかはいなくなるんだけど、今はそこにいるお互いの暖かさを感じていられる。
そんなスズの思いを知ってか知らずか、蟲を寄せてしまう体質故に一つ所に留まれないギンコは、そろそろ潮時かなと感じてます。
そんな折り、ミハルがいつもの年のように、雪の中で倒れているのが発見されます。ミハルの巾着の中から山菜と光る蝶が。そのまま眠り続けるミハルを残して、ギンコは旅立ちます。
「そんなの、ミハルが起きたら寂しがる」
寂しいのはスズ自身のはずなのに、ハッキリ言えないんだな。それを口にしても仕方のないことだと分かっているのか。いずれ旅立たなくてはならない人を引き留めても、別れが辛くなるだけだから。なんか演歌みたい。
いつもの年と同じなら春には目を覚ますはず。「また顔を見に来る」と言い残してギンコは去っていきました。
一年後、スズの家を訪ねたギンコは、ミハルがそのまま眠り続けていることを知らされます。ミハルが眠り続けている理由を突き止めるしかないということで、ギンコはミハルが倒れていた場所に出かけます。
「戻らんようなら、山の北側辺りを探してみてくれ」
スズは出かけようとするギンコの袖を握りしめ、必死の思いですがりつきます。いいなあ、胸がキュンとなるよ。ギンコも抱きしめ返して「大丈夫だから」とか何とか言えばいいのに、そうはしないんだな。
去年ミハルが倒れていた場所で、「春まがい」を見つけます。そこは一面の花盛り。桜は咲いて木の芽は芽吹いているけど、動物達はバタバタ倒れています。その中で蝶だけが元気に飛び回っている。この蝶が春まがいだとつきとめますが、ギンコも体が痺れて倒れてしまいました。ギンコに群がっている蝶は精気を吸ってるんでしょうね。あああ、ギンコが干からびちゃうよ。
ミハルと枕を並べて横たわるギンコ。
「ギンコのバカ・・・・」
ギンコのコートから出てきた竹の入れ物を開けると、中から蝶が出てきます。スズには見えないんですね、蟲だから。その蝶が蛹になると強い香を出し、眠っていた生き物は目を覚ますみたい。
スズが蝶を放したおかげでギンコとミハルは目を覚ましました。
ミハルはその仕組みを分かっていて、ギンコが蝶を逃がさなければ春に目覚めるはずだったのにと言います。なんだか危ない仕組みを利用してたもんだね。もしスズが蝶を放さなければ永遠に眠ってたってこと?。
再びスズの元を去っていくギンコ。このままスズに会わずに旅立とうとすると「そんなの、姉ちゃん寂しがる・・・・」。なんか、似た者姉弟。お互いに「自分が寂しい」とは言わないんだね。
「また来るよな?」と問いかけるミハルに、「さあ、冬じゃない時にな。人間も冬は弱っていかんからな」。
なんだ、ギンコも気が弱くなって、人の温かさが恋しくなる時もあるってことか。そんなときに優しくされると自分が一つ所にいられないということを忘れて、「スズと一緒に暮らそうか」なんて事をつい考えてしまうんでしょうね。
それが分かっているから、冬には来ない。あくまで自分に課した決まりを守りながら、スズの深い部分には踏み込まないようにしているギンコ。寂しさを胸に秘め、クールに旅立つ姿はかっこいいけど、いつまでもそれでいいのか、ギンコよ。
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蟲師「春と嘯く」 | Permalink | コメント(23) | Trackback(0)
2006-02-10 21:41:20
蟲師「籠のなか」 [ 蟲師 ]
![]() | 蟲師 (2) アフタヌーンKC (284)講談社漆原 友紀このアイテムの詳細を見る |
見終わってから唸ってしまいました。う〜ん、いつもながら高いレベルで作品作りがされている蟲師。いつもは蟲が人に及ぼす不思議な影響を描いていますが、今回は珍しく蟲と人との間にあるものが現れます。第1話でもそういった存在がありましたね。
竹林の中に根を張る蟲「マガリダケ」。普通は竹林の中にひっそり立っているだけですが、ここでは人間との間に子供をもうけています。
里に伝わる昔話。竹林の中に住んでいた子供のない夫婦。夫は家を空けることが多かったが、妻は「子供ができた」と告げる。不審に思った夫が夜な夜な出かける妻の後を追ってみると、妻は白い竹を抱きしめていた。その後男が家に帰ると、妻はタケノコを子供のように抱えていたということです。
キスケは子供の時、竹林の中で暮らす娘セツの所に遊びに来ていて、どうしてか里に帰ることができなくなります。村人は竹林に入りキスケに会うことができるみたい。そしてそれ以来キスケはセツと一緒に竹林の中で暮らすようになったとのことです。そして子供の出産。せつはなんと、タケノコを産み落とし、中から娘が出てきたのでした。
ギンコの調査によって、キスケを竹林に閉じこめているのは、白い竹、マガリダケだと分かります。マガリダケはその幹から出る水によって、竹林とセツ、そして子供の頃1回だけ水を飲んだキスケをコントロールしているのです。
キスケからマガリダケの水を抜けば竹林から抜け出せるんだけど、人間の体からすべての水を抜くことはできず、もう一つの方法はどんな影響が出るか分からないから勧めない。、というギンコの話に、キスケは「一度でいいから里に帰りたい、里にいる妹がどうしているか知りたい」という望みはもう絶たれたのだと悟ります。
その話を影で聞いていたセツは、キスケが里に帰りたがっていることを知ります。そしてそれを阻んでいるのが、幼い頃自分が飲ませた一杯の水だったことを。
そしてセツがとった行動は、斧でマガリダケを切り倒すことでした。しかし何度振り下ろしても斧はマガリダケに食い込まず、切ることはできません。セツはマガリダケから出る水を飲むことで、マガリダケにコントロールされていて、自分で自分の体を傷つけることはできないのでした。
しかし、感極まったセツは最後にマガリダケを切り倒してしまいます。倒れた曲がけは枝を足にして、ゴソゴソと歩いて逃げていきましたよ。この姿はちょっと不気味だったな〜。
姿が見えなくなったセツを捜して歩いていると、キスケは不意に里に出てしまいます。「里に帰れた!」。子供を抱いて懐かしい里に下りてみると、そこに待っていたのは村人の冷たい反応でした。妹も「そんなモノ里に連れて降りないで。子供にまで肩身の狭い思いをさせないで!」と、とりつく島もなし。
仕方のないこととはいえ、こうした村の因習は悲しいですね。得体の知れないものへの拒絶感は、人間が本能的に持っているものでしょうか。身を守るために必要な特性。それが人間に向けられるときは、鋭い刃となって他人を傷つけます。
セツはいなくなり、村人からも拒否されてキスケはひとりぼっちになったのかと思ったら、セツはちゃんと生きていました。よかった〜。
「それからしばらくは幸せに暮らした」という話でしたが、半年後ギンコがこの竹林を尋ねると、セツと娘はマガリダケから出る水がなくなると生きていけなくなったようで、死んでしまっていました。
何という救いようのない結末。キスケとセツ一家の生活は、非常に危ういバランスの上に成り立っていたのか。キスケもセツも相手を思いやる心から行動した結果なのに、それがこの一家のバランスを崩してしまった。誰も憎悪や妬みから行動した人はいないのに、平穏な竹林での生活はあっけなく消えてしまうんですね。
悲しみに暮れるキスケの前に、新たなマガリダケが現れます。墓の下から赤ん坊の泣き声が。新たな生命?の誕生に、ほのかな救いが見えるようなラストでした。
ここでふとわき出た疑問を。セツが産んだ娘は本当にキスケの娘なんでしょうか?。う〜ん、分からん。
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蟲師「籠のなか」 | Permalink | コメント(36) | Trackback(0)
2006-02-03 21:38:51
蟲師「一夜橋」 [ 蟲師 ]
![]() | 蟲師 (1) アフタヌーンKC (255)講談社漆原 友紀このアイテムの詳細を見る |
凄い橋ですね。祖谷のかずら橋ですか?。私、高所恐怖症なんで、とてもこんな橋渡れません。想像しただけで怖くなってきます。昔はこんな橋を平然と渡ってたんですかね?。この凄い橋を渡りながらギンコが一言。
「こりゃ、もう来てんじゃねえか?」
最初は「いい感じの橋だな」と風流に浸ってたのに、実際に渡り始めると命の危険を感じ始めたのか、途端に慌て始めました。おっかなびっくり渡るところがおもしろいけど、本人にしてみれば冗談じゃないかも。
ギンコに依頼があったのは、村の娘ハナを見て欲しいとのことでした。なんだか惚けたような娘の表情。かずら橋の所であった村の青年ゼンが事情を知っているようで、ギンコは話を聞きます。
ハナとゼンは付き合っていた仲でしたが、ハナに本家から縁談が持ち上がり、本家から支援してもらって生きている村としては、この縁談を断るわけにはいかず、話が進んでいくのでした。
そんな中、ゼンはハナと村を出て一緒に逃げようと誘います。一度はゼンについて駆け落ちを決意したハナだったけど、かずら橋を渡って村を出ようとするときに思いとどまります。
「こんな風に、私達だけ幸せになれない」
そう言って躊躇するハナの足下の踏み板が壊れ、ハナは真っ逆さまに谷に落ちてしまいました。
幸せになる。山深い村が幸せになると言うことは、とてつもなく難しいことなのでしょう。生きていくためには本家の支援を仰がなければならない。村が生きるか死ぬか。それがハナの縁談にかかっているなら、その話を進めるのは当たり前のことでしょう。
村の一青年と一緒になって苦労するより、本家に嫁いだ方が幸せになるに決まっている。それは現代の私たちが想像するより、はるかに現実的で、疑いようのない事実だったのでしょう。
そんな状況の中で、あえて村を犠牲にしてもハナを連れ出し、自分だけの幸せを追求しようとしたゼンの気持ちも批判しようがありません。しょせん、誰かが犠牲にならなければならない世界。村人の生活なんざ、知ったこっちゃねえ。自分だけの幸せを追求して、二人だけの力で生きていくんだ!とする若者を止められる人はいないでしょう。
そして起こった悲劇。絶対に助からない高さから落ちたにもかかわらず、ハナは自分の足で歩いて出てきました。抜け殻になって。
ハナの状況と、村人達の言い伝えから、ニセカズラが絡んでいることが分かります。ニセカズラは、より光のある場所を目指して死体に寄生し力を蓄える。十分力を蓄えたものが溜まると、死体を抜け出し、橋を造って谷から出て行く。ニセカズラが移動するために造る橋が、数十年に一度村人が見る「谷渡り」でした。
このことをハナの母に話すと、すぐに蟲を出してくれと言われます。ハナはこのまま生きていても幸せじゃない。いま蟲を出して死ぬかもしれないが、もし生きていられれば縁談があるんだ!。最後に本音が出てしまいましたよ。
三年前に男と駆け落ちし、抜け殻になった女でも、まだもらってくれるって言うの?。よっぽど本家の人はハナに執心しているんだね。他に女がいないのか?。
このままにしておけば、谷渡りの時期までは生きていけるのに、死んでしまう可能性があっても蟲を出そうとするのは一種の賭。それほど村にとって本家との縁談は絶対的なもので、藁にもすがる思いなのかもしれません。「ひどい母親だ」と罵るのは簡単なんだけど、貧しい村が生きていくための苦労を思うと、一概に批判することもできないです。そのあたりがこの話の悲しい所なんです。
「そんな話には乗れない」
ハッキリ断ったギンコがゼンの家に泊まっているとき、かずら橋が落とされます。やったのはこの母親。何としてもギンコを帰したくない。一縷の望みがあるなら、ハナから蟲を抜いて縁談を進めたいという、母の執念のようなものを感じますね。ハッキリ言って怖い。
フラフラと山を歩くハナを見かけたゼン。村八分にあってハナと会うことも禁止されているゼンだけど、目にしたハナはやはり生きているハナです。
「なあ、おまえ、ハナだよな?。何もかも忘れちまってるだけだよな?」
抱きしめると暖かい。抜け殻になっていても、血が通って生きているならハナを見限って村を出て行くことなんてできないでしょう。目の前で生きていれば、たとえ抜け殻でも愛しさが沸いてくるはずです。
そのゼンの目の前で、ハナの首筋から黒い蟲が抜けて行きます。倒れるハナ。抱き留められたハナはもう息をしていません。あまりに唐突にやってきた死。ゼンにとって、いままでハナは生きる希望だったのが、あっという間に消えてなくなってしまいました。
呆然と座り込むゼンは、あまりに悲しすぎる姿です。
谷渡りと共に村を出て行くように勧めるギンコ。ハナがいなくなった村を出て、新しい生活を始めるつもりで、ゼンはギンコと一緒にニセカズラの橋を渡ります。しかし、そのカズラがハナの首から出てきたカズラと同じものであることを知ると、もう立ち止まってしまいました。
「踏みつけてなんざ、進めねえ」
ゼンにとって、3年間ハナだったニセカズラを渡って、自分だけが新しい生活を始めることはできなかったのでしょう。それほどこの3年間はハナを支えに生きてきたのだし、今までの出来事を振り切って出て行くことはできなかったのです。
引き返そうとしたとき、ニセカズラは切れてゼンは谷底に落ちてしまいました。ハナが落ちた谷底へ。
谷底ではニセカズラに取り憑かれたゼンが、村人に見つけられました。正確にはゼンの死体に寄生したニセカズラが。
山奥に閉ざされた村で、駆け落ちしようとした男女の悲劇で、あまりに悲しい結末でした。
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蟲師「一夜橋」 | Permalink | コメント(0) | Trackback(0)
2006-01-27 18:46:49
蟲師「眇の魚」 [ 蟲師 ]
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ギンコの過去が、今明かされます。
ギンコは子供の時は「ヨキ」と言う名で、母と一緒に行商の旅を続けていたようです。山の中で道に迷った二人は、土砂崩れに巻き込まれ、ヨキ一人が助かります。母の遺体の前でどうすることもできないヨキは、倒れているところをヌイに助けられました。
ヌイは白髪で片目が不自由な中年女。ぶっきらぼうな態度が冷たい印象を与えますが、身寄りのないヨキを家に置いてくれるだけで、ヨキにとっては頼るべき大人として映ったでしょう。子供が一人じゃ生きていけないし、一緒にいてくれて、住むところや食べ物を与えてくれるだけで、その恩と愛情を子供は感じ取るものです。
ヨキに尋ねられて、ヌイはこんな山の中で一人で暮らしているわけを語ります。
ヌイは蟲を引き寄せる体質のため、旅の蟲師をしていた。それでも足繁く尋ねる里には夫と子供がいて、ヌイの帰りを待っていたのでした。ある時里に帰ってみると夫と子供の行方が知れなくなる事件が起こり、それがこの沼に住む蟲、常闇とギンコが関わっていると突き止めますが、以来この場所で家族を捜しながら6年の月日を過ごしているということです。
6年。多分ヌイには、夫と子供はもう闇に消えたと分かっているのでしょう。その事実を受け入れるのに6年の月日を要したということです。
ヌイの話す常闇とギンコの秘密を知りたいヨキは、夜更けに沼をかき回し、常闇とギンコを目の当たりにします。そこで見たものは、白く色が透け、片目になった沼の魚が、もう片方の目も闇に包まれ消えていく姿。沼に片目の魚しかいなかったのは、両目が見えなくなると消えてしなうという事実でした。そしてギンコの光を浴びていると、いずれ両目が闇に冒されてしまうこと。
すべてを知ってしまったヨキに、ヌイはここから旅立つように言います。
「ここは私と常闇たちの場所。お前のいていい場所じゃない」。
過去にとらわれ続け、いずれ闇に消えてしまう運命のヌイは、若いヨキが頼れる大人である自分を慕うことで、自分と運命を共にすることはヨキのためにならないと考え、ここを出て行くように突き放したのでしょう。
ヨキと一緒に暖かい暮らしを送れたことで、家族が消えた事へのわだかまりが消え、運命どおり闇に消えることを受け入れることにしたのか、「これで、もう、いいよな」と呟いて消えていこうとするヌイ。
いったんは旅立ったヨキも、沼の異変に気づいて戻ってきます。溢れてくるヌイへの思いに、「行っちゃイヤだ!」と消えていくヌイの手を取って、ヨキは一緒に闇に包まれてしまいました。
驚いたヌイは、ヨキが自分に寄せる愛情を感じ、優しくヨキを諭します。
「この先は片目を閉じてお行き。ひとつはギンコにくれてやれ、常闇から抜け出すために。だがもうひとつは堅く閉じろ。また日の光を見るために」。
ヨキはまた倒れているところを村人に助けられます。今度は自分の名前以外のことはすべて忘れて。「常闇に捕らわれると自分が誰かも忘れてしまう。名を思い出せれば抜け出せるが、思い出せないときは何でもいいから名を付けたらいい。しかし、元の名前は忘れてしまう」以前、ヌイが語って聞かせたように、ヨキは自分の名をギンコとしか憶えていなかったようです。
髪は白髪になり、片目は闇のように暗く、蟲を寄せ付けるようになっていました。それ以後ギンコと名乗るようになり、助けてくれた村の家からは、蟲を寄せ付ける性質で迷惑をかけないようにこっそり抜け出し、各地を放浪して歩く蟲師となったのでした。
最後に助けられたときには、今のギンコの顔になってましたね。ギンコが吸っているタバコはヌイに教わったもの。「蟲はただそれぞれが在るように在るだけ」という信条もヌイから受け継いだものです。記憶をなくしても、ヌイから受けた愛情は、生きる力のようなものになってギンコの中で生きているんですね。
今回も本当にいい話で、ヌイの愛情とヨキの思慕には涙が溢れてきました。
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蟲師「眇の魚」 | Permalink | コメント(20) | Trackback(0)
2006-01-20 10:43:34
蟲師「やまねむる」 [ 蟲師 ]
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峠の茶屋で蕎麦食ってるギンコ。ふと見た山には・・・ぽっかり丸い穴が。なんじゃこりゃ?、ってことで麓の村を訪ねると、村人が思案しています。聞けば、この山の主である蟲師のムジカがいなくなって困っているんだそうな。ギンコがこの蟲師を捜してくることになります。
山には光脈筋に当たっており、ムジカがいなくなって、主が統制がきかなくなり山が異変を起こしているようです。
途中ムジカの弟子というコダマと出会い、山に入っていくと、足を滑らせて倒れているムジカを発見しました。その前にモグラノリでの探査を跳ね返したので、こんなにあっさりと見つかるのは、何かワケありじゃ?と思っていたらその通りでした。
ムジカが見つかって一安心している村人ですが、ギンコは遠くから近づいてくる鐘のような音が気になります。明け方、霧の中をムジカの庵に行ってみるともぬけの殻で、ムジカは山の頂上にいました。
そこで行っていたのは、新たな主となる「クチナワ」を呼び寄せることでした。山の主は蟲を喰らう蟲。そしてその地に安定をもたらす。クチナワは古い主を喰って新しい主となるのでした。つまりムジカは新しい主を迎えるため、自分を食べさせるために、クチナワを呼び寄せたということです。
ムジカはもう歳なので、弟子のコダマを新しい主として教えているわけなんだけど、コダマはムジカの子というわけではなく、村で食えなくなって捨てられた子をムジカが育てていたのを、コダマの兄弟がみんな死んでしまったので、親が引き取って育てているのです。
ギンコは「身勝手な親だな」って言ってたし、現代の価値観で図ればその通りなんだけど、口減らしのために生まれた子供を捨てるのは珍しいことではないし、生きていくためには必要なことだったんでしょう。決して身勝手で捨てた訳じゃないと思います。まあ、そのあたりはギンコも分かっているような言い方だったけど。
コダマに山の主をさせると言いながら、それはコダマの人生をこの山に縛り付けてしまうことになるので、ムジカの本心では、それはさせたくなかったのでしょう。
自分の命を犠牲にして次の主を迎えようとするムジカに「何か別に方法があるだろ!」と叫ぶギンコです。これまでも何か別の方法を見つけることで、修羅場をくぐり抜けてきたギンコだったので、今回も何か方法があるはずという思いが強かったのでしょう。
ですが、今回は、なかった。最後に呟きます。
「ないねえ、残念ながら」。
人生には、うまい方法が見つからないこともあるってことです。見つからないことの方が多いかも。なんか、無常感が胸に迫ってきますね。
ムジカも昔はたびの蟲師だったみたい。たまにこの村に立ち寄って、山の主の意向を伝えていたんだけど、村人からムジカを慕うサクをいう女と所帯を持って村に住むことを勧められます。その席で「ここにオレが住めるとすれば、山の主を殺して食ってオレが主となることだ」と口にしてしまったことが、ムジカの人生を変えてしまったようです。
それを聞いて思い詰めたサクは、主を殺してしまいました。ムジカが言ってた前の主って、イノシシの姿をした神々しい生き物だったらしいですが、それをサクは殺せたんですね。新しい主のクチナワも山にとぐろを巻くほどでっかい姿だったのに、前の主は人が殺せるほどの大きさだったの?。まっ、あまり細かい詮索は止めましょう。
「あんたが言ったとおり主を殺して牡丹汁にして食わせるから、ずっとここにいて」って言われたら・・・・・、ムジカは口に出してしまった責任を感じて、またサクのことが好きだったんだろうから、サクと所帯を持ったみたいだけど、私なら・・・・恐れをなして逃げ出しそうです。だって怖いよ、所帯を持つために、山の主を殺しちゃう女なんて。
高いレベルを保ったまま続く蟲師も11話です。2クールあるのかな?。
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ワイヤーが丸く屈曲された耳かきは、微妙な弾力が心地よく使い心地も抜群。耳穴にピッタリとフィットし、一かきでワイヤーに耳垢が引っかかり、一度にどっさり取れます。この美しいフォルムはグッドデザイン賞も受賞しており、まさに機能美を備えた一品です。蟲師「やまねむる」 | Permalink | コメント(11) | Trackback(0)
2006-01-13 21:42:27
蟲師「硯に棲む白」 [ 蟲師 ]
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化野先生が再登場です。蟲に関する名品珍品を集めている蟲オタク化野先生、その貴重なコレクションが収められている蔵に村の子供達が侵入します。子供って奇妙なところへは止められたって入っていきたくなるもので、窓に鉄格子を付けて侵入防止を図ってますけど、役に立ちませんでしたね。
珍しいもの見たさに蔵に忍び込んだ子供達は、ある硯を見つけて墨をすってみます。水を付けてこすったところ何か霧のようなものが出てきて、それを吸い込んだ子供達は、その日から体が冷えて床に伏せってしまいました。
医者である化野が往診に行ってみると、女の子が「寒い、寒い」と震えながら、化野の蔵に入って硯を使ったことを告白しました。
さあ大変。化野先生。化野の過失ではなかったにしろ、自分が集めていたコレクションに触れて子供が3人病に倒れたとあっては、責任を感じないわけにはいきません。これで責任を感じなければ人間失格。蔵にしまっておいて、鉄格子まで付けてたんだから、オレに責任はない!などと言い出す輩は、まともではありません。
病状の不思議さから蟲がからんでいると見た化野は、ギンコを頼ります。
「オマエが扱っているのは異形の者だということを忘れたのか?」
ギンコの言葉は化野の心に刺さりますが、今はギンコに頼る以外に道はありません。祈るようにギンコに原因を探ってもらいます。このあたりの化野の姿は哀れですね。
硯を使った人3人は、みんな一様に寒さを訴えて死んでいて、残るは硯を作った人を捜す他ない、ということになります。硯には作者の刻印があるので、捜していけば簡単に見つかりました。これは意外でどこの誰が作ったのか分からないものかと思いましたが、曰く付きの硯なのですぐに分かったのかも。
硯の作者「たがね」に会ったギンコは、硯にまつわる話を聞かされます。
たがねの父は硯職人で、たがねも跡を継ぐべく父について腕を磨いていました。父が病に倒れてから、硯の発注人だった婚約者に職人を辞めるように言われていたたがねでしたが、自分の納得のいく硯を作ることができたから見て欲しいと、件の硯を携えて婚約者に見せに行きます。
硯を刷ってみたとき何かが出てきて、それを吸い込んだ気がしたけど、たがねの体に異変は起こらなかったため気にしていませんでした。
硯の出来の見事さに、両親を説得すると約束した婚約者でしたが、たがねの元に届いのは、婚約者が死んだという知らせ。原因となったと思われる硯は、不吉に思われて売り払われた後でした。それ以来たがねは、硯を作るのを辞めてしまい、その硯を捜していたのです。
話を聞いたギンコは、大体の心当たりができます。その硯は蟲の化石でできた物で、水に触れると蘇生し、体温を奪って雲のように氷を降らせます。
そこで蟲を吸い込んだ3人の子供を気圧の低い山の頂上に連れて行くと、子供達の体から蟲が抜けて、元の体温が戻ってきました。
自分が作った硯が元で人が不幸になるのを止めたいと願うたがねは、自分で硯を処分しようとします。これに対して未練たらたらの化野先生。子供達がどうなるか分からなかったときは、意気消沈してうなだれていたのが、事件が解決すると途端に蟲の化石でできた硯が惜しくなったのか、処分を思いとどまらせようと躍起になります。懲りない人だね、収集家って人種は。
結局、硯自体はすばらしい物なので、中の蟲を開放してやることになり、浜辺で蟲を吸い込まないようにして、硯に水を与えます。
硯からは猛然と蟲が沸きだしてきて、空一杯に広がり、何日も雹を降らせることになりました。
「村中で瓦の修理をしなくちゃなあ」
「私に請求しても構わない。一生かかっても払うから」
そうは言っても払う当てのないたがねにギンコは、
「また硯を作ればいい。腕は確かなんだから」
曰く付きの硯を処分できて、たがねはまた硯職人としての人生を再び歩み始めたんでしょうね。
今回もしみじみとしたいい話でした。
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蟲師「硯に棲む白」 | Permalink | コメント(0) | Trackback(0)
2005-12-23 10:38:03
蟲師「重い実」 [ 蟲師 ]
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話も重い話でした。女の子が出てこないから余計に重いです。
「父母の骸に根を張りし苗よ、青い青い葉を伸ばせ。重い重い実をつけよ」。 天災によって周囲に村が不作の時でも、奇跡のように豊作の村がある。それは御先祖様に護られているからなんだそうだが、その豊作の年にはその代償として村の誰かに「瑞歯」がはえてきて、その瑞歯が抜け落ちるとその人は死んでしまうんだそうです。
その村に立ち寄ったギンコは、抜け落ちた歯と司っている村の祭司に会いに行きます。
ギンコによると、それは「ならずの実」というもので、蟲の光脈?を封じ込めた物。土に埋めれば1年かぎりの豊作をもたらす。その代わり誰か一人が死ぬ。
一人の犠牲で大勢が飢饉から救われる方法があったとき、それを使うことが許されるのか?。それが今回のテーマになっています。この祭司は先代からこの実を受け継いで初めて飢饉に遭遇したとき、この実を土に埋めますが、その結果犠牲になったのは祭司の妻でした。
そしてもう一回この実を使うときは自分が犠牲になろうと決心し、今回の天災の時は自分で毒をあおり、体を弱らせることで自分に瑞歯がはえてくるようにしたのでした。
私は、サネのお母さんに瑞歯がはえるのではと気を揉んでしまいましたが、そうはなりませんでしたね。サネはそれを気にしていたようですけど。
物語では、瑞歯が抜けて死を迎えた祭司に抜けた歯を食べさせ、祭司は生き返ります。そして不老不死の体となり、諸国を旅して土を肥やす方法を伝えて歩いたということです。なんだか農業普及にまつわるおとぎ話のようですね。
さて最初のテーマの答えですが、やせた土地に生きる者にとって、飢饉を乗り切るには一人の犠牲は仕方ないと言う祭司と、蟲師の立場から、異形の物を土に埋める行為はいつか均衡を失することになると言うギンコ。
私ならやっぱり使うでしょうね。ならずの実がなくても、龍神様の怒りを静めるなんて理由で、昔から人は同胞を生け贄に捧げてきましたから。村全体が生き延びるかどうかの前では、一人の犠牲は軽いものです。
その犠牲が「弱い者から連れて行く」というように、犠牲者が特定できてしまうとややこしいことになりそうです。「うちの者はみんな元気だから大丈夫だ。豊作なるなら使った方がいい」と考えたり、「寝たきりのじいさんを連れて行ってくれたら都合がいい」なんて考え始めたりして、どんどん使ってしまいそうです。
ならずの実を使うかどうかの判断が祭司一人に任されてるって所も、祭司にとっては重い責任に耐えられなくなりそうです。無責任な祭司が現れたら「オレが犠牲になることはないから」なんて理由で軽く使ってしまいそうですね。
ならずの実は代々祭司にのみ伝えられ、決して口外されることはないようです。それほど村の中で祭司という立場の人は尊敬され、絶対の信頼を寄せられる特別な人だったのでしょう。
私が愛したアニメ
★サイパン発★TV放映後注文殺到 元祖ボージョボー♪♪ おすすめ度 :
お土産として人気が高く結婚ができるお守りと言われています。他にも人形の手を結ぶとお金が入ってくるなど、幸運を運んでくれそうです。クリスマス・ギフト・ショップ
蟲師「重い実」 | Permalink | コメント(0) | Trackback(0)
2005-12-16 16:49:54
蟲師「海境より」 [ 蟲師 ]
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「海千山千」という言葉があるように、蛇が山に千年、海に千年住むと龍になるという話。時期が来ると山の虫と海の蟲が近海で合流し、千日後、一体の蟲になるということですが、その現象に巻き込まれた夫婦の話です。
大きな問屋で働いていたシロウは、そこの主の次女と婚約しますが、実は店が傾いたために体よく追い払われたのでした。故郷の漁村に帰ってきたところで、あまりの貧しい村の有様に、奥さんのミチヒは不平を漏らし、ケンカになります。
売り言葉に買い言葉で気まずい雰囲気になり、別々の渡し船に乗って海に出たところ、蟲の合流に出くわし、ミチヒは行方不明。シロウだけが岸に流れるいたのでした。
それから2年半の間、何をするともなく沖を眺めて暮らし、村では変人扱いされていたシロウですが、偶然ギンコに会って「あんたももう、自分のこと考えた方がいいんじゃないか」と言われたからか、村で取れた海産物をピンハネする仲買人との交渉を買って出たりして、まっとうに生きるようになります。かわいいお嫁さんまでもらって。
でも時々沖を眺めてぼ〜っとしているみたいで、やっぱり生き別れになった奥さんのことを考えたりしてるんでしょうね。ケンカしたまま死に別れたりすると、後で悔いが残りそうですね。だからといって誰ともケンカせずにいるわけにも行かないし、それはどこかで踏ん切りをつけて、ギンコが言うように「自分のことを考え」なくちゃいけなんでしょうけど。
3年前と同じように汐が上がって、海にモヤがかかる日がやってきて、シロウは一人海に出ようとします。そこにギンコ、再び登場。立ち直ったシロウを連れて「物見行」と称して沖に出ます。
ギンコが言った「あのモヤの中では、陸に戻ろうとする者にしか陸は見えず、(戻る意志のない者は)戻れない」という言葉は、シロウには堪えますね。それじゃあ、あの時ミチヒはシロウとケンカして、「もう陸なんか戻りたくない」という気持ちになっていたから戻ってこられなかったってことじゃないですか。それが本当で、仕方のなかったことだとしても、そう言われてしまうと悔いが残りますね。
今、シロウは陸に戻りたいという意志がしっかりしているということで沖に出ます。そしてモヤの中で見た物は、ミチヒが乗っていた船。そこに横たわるのはミチヒの亡骸と思って着物をめくると、ミチヒはあの日のまま生きていました。
そして「三日も放っておくなんてひどい。けどこうして助けに来てくれた。私も文句が過ぎた、本気じゃなかったの。あんたの故郷早く見たい」と言います。シロウの願望が見せた幻なのか、あの時の言葉をいまだに悔やんでいることが蟲に言葉を語らせるのか、シロウは自分が戻るべき陸の方角として沖を指さします。
しかし蟲は変態を始め、ミチヒと思っていたものも白く解けて龍の一部になってしまいました。
ギンコとシロウが陸に打ち上げられたのは、陸の時間で一月後。ほんの2,3時間おきに出ている間に一月が流れていたそうです。
ミチヒの荷物と一緒に、空の船が浜に上がります。シロウはミチヒのことを納得したように、上等の着物を今の妻に与えました。
世の無常が心に染み入るようないい話でした。
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蟲師「海境より」 | Permalink | コメント(0) | Trackback(0)
2005-12-09 15:21:52
蟲師「雨がくる虹がたつ」 [ 蟲師 ]
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今回の話はあまり不幸な出来事がなかったですね。なんだか淡々とした話でしたが、こういう物語、私は好きです。
虹のような蟲、虹蛇(こうだ)に取り憑かれた男の話です。と言っても取り憑かれたのはお話に出てくる男虹郎(こうろう)の父。虹郎は偶然虹蛇を見て取り憑かれた父から、「自分が見たこの世で一番美しいものの名をお前の名前にしたかった」という思いから、取り憑かれてすぐに生まれた次男に虹郎と名付けたのでした。
河原から虹がわき上がっているのを見つけ、手で触れてしまった父は、次第に雨の気配を感じると外を嬉しそうに走り回り、何日も里に帰ってこないという奇妙な振る舞いをするようになります。毎日大量の水を飲み、そのうち足が立たなくなるほど衰弱してしまいました。
父は優秀な橋大工でしたが、虹蛇に取り憑かれてからは仕事はできなくなり、虹郎の兄が橋大工をついでいます。おかしな行動を取る父からもらった名前をからかわれ、怪我で左手が思うように動かない虹郎には、病床の父の側しか居場所がなくなり、終いには村に居づらくなって飛び出し、虹蛇を捜して旅をしているのでした。
偶然雨宿りで一緒になったギンコがこの話を聞いて「それは虹蛇だ」と教えてくれ、一緒に探すことになりました。
「何のために虹蛇を捜すのか?」。自分でも言っているように、虹郎は「父に虹蛇を見せてやりたい」「村人に父がこうなった原因を見せてやりたい」という理由を作り出して、村を逃げ出し、どこへ行くか何をする当てもない自分に目的を与えていたのでしょう。人間は「何かすること」がないと生きていけませんから。
ギンコが言うように「後ろめたさを紛らわすために、自虐を続けているだけだ」。ハッキリ指摘しますね。敢えて苦しく辛い重荷を自らに課す人というのは、どこかに後ろめたさやそうしなくてはいられない飢餓感があるのかも知れません。
「どこかに根を下ろして、過去なんか捨て去ったら良かたのによ」。それが過去に村を逃げ出したことからくるなら、別のところで再出発する道もあり、みんなそうして過去を捨てて生きているのです。
ついに見つけた虹蛇。太陽の方角に普通の虹とは逆の順番で色を持っています。間近で見つめると滝のように上昇していく虹は本当に美しい。「これは持って帰えらにゃ」と手を触れると電気のように痺れます。
ギンコに虹蛇の中から連れ戻され、とても持って帰れる物じゃないと悟った虹郎です。5年間探し続けてきた虹蛇が上昇して消えていくのを眺めていると、ぽっかり胸に穴が開いたようだと言います。
ずっと後ろめたさを紛らすためにすがりついてきた虹蛇を見つけてしまって、虹郎はさっぱりとした表情で「これからどうするか、しばし考えるさ」と、自らに区切りがつけられたような気がします。
以後虹郎がどうしたのか分からないと言うことですが、西国の暴れ川に「流れ橋」という増水しても流れない橋ができたと言うことです。村に帰った虹郎が建てたのか、それとも虹郎の兄が建てたのか、まったく関係ないのか?。この物語を聞いた誰もが、人生をやり直すことができた虹郎が建てたと思いたいはずですよね。
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蟲師「雨がくる虹がたつ」 | Permalink | コメント(10) | Trackback(0)
2005-12-02 21:23:26
蟲師「露を吸う群」 [ 蟲師 ]
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毎回感動させられる蟲師。このクオリティの高さとストーリの充実度は半端じゃありません。毎週見るのが楽しみです。
岩ばかりの絶海の孤島。ろくな農作物は育たず入り江もないことから大潮の日しか船を留めることができず漁業もできない。生きていくのに困難な島にも人は生きています。
この島で発生する奇病。いつもは惚けたような状態ですごし、周期的に老化し一晩過ぎると元に戻る病が島に住む人達の間にぽつぽつ現れています。この病にかかった人の奇妙な症状から、いつしか患者が「生き神様」とありがたがるようになりました。
これに目をつけたのがアコヤの父。患者が夜はき出す特殊な息を吸えば万病が治るとふれこみ、いつしか病気を治して欲しいと望む島民達が貢ぎ物を持って生き神様になった患者にお参りをするようになります。
これでアコヤの一族は裕福に暮らせるようになり、生き神様が死ぬと数ヶ月を待たず新たにこの奇病にかかる者が一族に現れて生き神様として信仰を集め続けるのです。
この島に住む少年ナギは、幼なじみの女の子アコヤが父に呼ばれた日から生き神様になってしまったこと。そしてなけなしの貢ぎ物を持ってお参りに行ったのに母は治らず死んでしまったことから、生き神信仰に疑問を持ち始めます。
決定的だったのがアコヤの父が「また病が治ったという村人が出たのか。暗示で本当に病が治るとはな・・・」と話しているのを聞いてしまったことです。この事でアコヤが生き神になったのも父のせいだと確信したナギは、まわりには「もう帰らない」と言って島を後にし、密かに蟲師のギンコを連れて島に戻ってきました。アコヤをギンコに治療して元に戻してしまうために。
話を聞いたギンコは、これは蟲が関わっていると言います。普段は父の目が光っている中で、姿を隠しながらアコヤを診察すると、案の定鼻孔の奥に蟲が寄生していました。
同じような症状をしている人達が岬の方に隔離されて生活していますが、その人達も同じように蟲に寄生されています。さらにネズミなどの動物も同様の症状があることや、大潮の日にこの病にかかる人が出ることから、大潮の時だけ行くことができる場所に蟲の本体がいると推理します。
ギンコがアコヤの額を針で突くと、螺旋状の虫が出てきて死んでしまいました。アコヤの瞳に光が戻り正気に戻ります。アコヤを抱きしめるナギ。「一緒に島を出よう」と誘うナギですが、アコヤはそう簡単に島を出て行くわけには行きません。
常識的には生まれ育った島を出て行くというのは、今とは考えられないほどの勇気と苦労がいったことでしょう。親と故郷を捨てると言うことは今までの人生とは違った世界で生きるということで、それに躊躇することは当然でしょう。
そしてもう一つ。ギンコによると、今まで生き神として生きてきた時間は「蟲の時間を生きてきた」ということです。生き物は一生の間にする鼓動は決まっていて、一生の密度は同じであるという説もあります。1日の中で生まれてから死ぬまでの蟲の一生を毎日繰り返していた時間は、人の一生を1日で感じるほど密度の高い時間だった。それは、頭でなにも考えることができないほど満たされた時間であって、今もとに戻ってみると、自分の前に広がる膨大な時間の前に立ちすくんでしまい、不安で仕方がないということです。
次の大潮の日まで後3日。アコヤは元に戻ったことを父に隠していましたが、老化現象が現れる時間になっても現れないことから、父に気づかれてしまいます。
手下の者にナギを捜させ、大潮のときだけに現れる昼顔を見つけ、蟲の本体を探り当てたところを見つかってしまい、ナギとギンコは洞窟の中と逃げまわります。
一方村人達にナギの居場所を尋ねるアコヤは、自分が生き神ではなくなったこと、そして今まで村人を生き神だと偽ってきたからくりをすべて話してしまいます。
ナギとギンコは追っ手から生き延びますが、アコヤの父は怒った村人に殺されてしまいました。父の亡骸の前で「私が殺したんだ」と涙ぐむアコヤ。その罪の重さに耐えられなかったのか、父が再びアコヤに蟲を宿らせるためにとって来た蟲がいる昼顔を吸い込んで、体内に蟲を宿らせてしまいました。
再び寄生されたアコヤは、もう同じ方法で蟲を殺すことはできず、一生ナギに付き添われて島で生きることになります。次の大潮で船が出せるまでの1ヶ月。岬にいる人達みんなにギンコが治療を施しますが、中には自ら再び蟲を宿す人も現れると言うことです。
いったん蟲の濃密な時間の中で生きることを憶えてしまうと、人間の膨大な時間を前にした不安に耐えられなくなる。まるで麻薬のような蟲ですが、そっちを選ぶ人も出てくるということです。
最後に島民が協力して入り江を作るための作業を始めたところに、空虚で頼りない感覚の中で人間ができることは小さいものだけど、目の前に広がる膨大な時間の先に希望を感じられるラストでした。
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蟲師「露を吸う群」 | Permalink | コメント(0) | Trackback(0)
2005-11-25 19:02:46
蟲師「旅をする沼」 [ 蟲師 ]
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液体状の蟲、水蟲(すいこ)。無色透明の液体の蟲で、古い水脈の水に好んで住む。間違えて水蟲を飲み続けると常に水に触れていないと呼吸ができなくなり、身体が透け始める。放っておくと液状化し身体が溶けてしまいます。
その水蟲のなれの果て、最後の姿が沼となって海を目指します。まるで鮭が生まれた川を憶えていて昇ってくるように、地下水脈をたどって海にたどり着くと死んでしまいます。その骸が魚のえさになって海を豊かにするという食物連鎖みたいなものまで備えている蟲です。
ギンコが山の中で見かけた沼と少女。次の山でも同じ沼と少女を見かけ、狐狸に騙されているのかと思ったくらいです。
少女は村を水害から救うために、人身御供として捧げられた者でした。「竜神様に嫁入りしたと思えばいい」という古老の言葉は、本当にそう信じていたのか、死んでいく者への精一杯の気休めなのか分かりませんが、当時村人は本気で水害は竜神様のたたりが原因で、それを鎮めるためには若い女を人身御供として捧げなければならないと考えていたようです。
差し出される女の方の心境はどうなんでしょうね。村のためなら仕方がないと諦める?。村を救う英雄として晴れやかな気分になる?。悲劇のヒロインとして陶酔の境地に至る?。いおの姿を見ていると高揚したところは見られないので、仕方なく運命を受け入れているというところでしょうか。
人身御供は竜神様に差し出されるのだから、誰でもいいというわけにはいかないでしょう。村一番の器量よしで、性格もよく、誰からも愛され尊敬される処女でないと竜神様の怒りを収めることはできません。
それ選ばれたからには、家族の生活は村人から保証され、貴い犠牲を払った者として尊敬されることは当然のことではないかと思います。
人身御供としていおは一度死を決意し、川に身を投げましたが、激流の中で水蟲にとらえられ、生を永らえます。いおは「沼が生きていていいと言ってくれた。だからここが唯一の居場所」と信じて、水蟲と共に行動することを選んだようです。
それはやはり一度は死を決意したとは言え、生きている者は誰でも生きたいと願う気持ちがあったからではないでしょうか。でも自分は死んで村を救わなくてはならない立場の者なのだから、助かったからと村に戻るわけにはいかない。それどころか死んでなくてはならない身でありのだから、生きていること自体が村人や母を裏切ることになるのです。
ならばこのまま沼と一緒に朽ち果ててしまうことを選んだのは、いおにしてみれば他に選択がなかったことのような気がします。
ギンコはいおのなかに「まだ生きていたい」という望みを見たのでしょう、水蟲が海にはいるところに網を張っていおを待ちます。ギンコの思惑とおりに巨大な緑の水蟲が網にかかりますが、いおは網をすり抜けてしまいます。いおが着ていた晴れ着だけがむなしく網にかかりました。
この表現はとても効きましたね。いおはもう溶けてしまって、晴れ着だけが残されたと思って、「ああ、今回も救うことはできなかったのか」という感じがしましたが、いおは漁師の網にかかって救い出されました。体から水蟲が抜けて寒天状になっていたのが、元の体に戻ります。
その後元気になったいおは、漁村に居着いて新しい生活を始めます。漁から戻ったいおの晴れやかな表情が印象的でした。
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2005-11-18 21:58:51
蟲師「枕小路」 [ 蟲師 ]
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前3回とも子供が主人公で、子供のかわいらしさが物語に優しさを付け加えていましたが、今回は蟲に取り憑かれた男の数奇な物語って感じで恐ろしさが勝っていました。
刀研ぎ師のジンに取り憑いた蟲は「夢野間(いめののあわい)」と呼ばれる蟲で、取り憑いた者に予知夢を見せます。予知夢を見る男の噂を聞いて蟲師のギンコがやってきて、薬を処方していきます。
1年後村を訪ねたギンコが見たものは、荒れ果てて無人になった村の様子。一人家の中で待っていたジンから、事の顛末を聞かされます。
水脈を見つけたりしてジンの予知夢が村のためになり、そのためお礼をもらったりして村人から感謝されるようになると、かえって不安を感じてしまったジンは、しまっていた薬を飲むようになります。すると予知夢を見る回数は減りますが、ある時村を襲った洪水を予知することができず、そのためジンの娘も死んでしまいました。
村人から「どうしてこんな大事を予知できなかったのか?」という不信の目を向けられるようになったジンは、薬を飲むのを止めてしまいます。そして予知夢を見る回数は増え、夢はより鮮明になっていきますが、ある日ジンはとんでもない夢を見てしまいます。
村人が病に罹り、ボロボロになって死んでしまう夢。そしてその夢のとおり、妻をはじめ、村人は一人残らず死んでしまいました。
これでやっとジンは気づきます。自分は予知夢を見ているのではない。自分が見た夢を蟲が現実にしているのだと。その証拠に、自分の側にいる人から死んでいった。まず妻。そして隣家。そのことをギンコに告げようと待っていたのでした。
まさかそんな蟲がいるはずない。それはジンの妄想かとも思いましたが、ジンの予想は的中していたようです。そのことをジンに話さなかったのは、夢野間に取り憑かれたら元に戻ることはなく、人は自分の夢が現実になることに耐えられないからだということです。
それはそうでしょうね。予知夢を見るだけでもものすごい重荷になりそうなのに、自分が見た夢が現実になってしまうと聞いたら、恐ろしくて眠ることができなくなってしまいます。
私は眠りが浅いのか、明け方突拍子もない夢をよく見ます。追いかけられたり、怒ったり、泣いたり、前の晩見たアニメが出てきたり、昔の友達や親兄弟、それこそオールスター総出演の夢を毎晩見るので、それが全部現実になったらさぞかしメチャクチャになってしまいそうです。
絶望したジンは残った薬を全部飲んで自殺を図ります。寝込んでしまったジンを救うため、ギンコは一人治療法を捜します。夢と現実とを結ぶ通い道がどこかにあるはずだがと考えているとき、ジンの寝言にギンコが答えると、寝ているジンと会話がつながります。
「寝言と会話をしてはいけない。それは彼岸の国の言語」。
枕元の屏風にジンの見ている夢が写り、夢の中で燃えていた火が枕を通って布団に燃え移ります。ギンコが捜していた夢の通い路は「枕」だった。一生の1/3の間頭を預けている枕は、「魂の蔵」から来ているという説もあるほどで、そこが夢の通い路になっていてもおかしくない。
起きあがったジンが寝ていた枕を刀で斬りつけると、枕の中は蟲で一杯。ギエエエエエエエエエエエ。蟲がウニョウニョ。さらに驚いたことに、枕が切られると、ジンの胸も切れてしまいました。
死んだと思ったジンはギンコの手当がよかったことから一命を取り留め、元気になると刀研ぎ師の仕事を再開しますが、以後精神を病んでしまったようで、往来で刀を振り回したりすることもあり、結局刀を自分に突き刺して死んでしまったそうです。
蟲に取り憑かれてしまった男の末路ということで、まったく救いのない話でしたが、それがかえってリアリティを増しています。「ジンが悪いわけではない。蟲が悪いわけでもない。ただお互いの生を全うしているだけだ」という言葉は、私たちが生きている現実の世界は、実は情け容赦のない厳しい世界だということを思い知らされます。
ギンコが何か魔法のような方法で夢野間を退治して、メデタシメデタシになればスッキリしますが、そうならないことがかえって昔話っぽい現実感を感じさせてくれました。
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蟲師「枕小路」 | Permalink | コメント(270) | Trackback(0)

















