2006-01-05 18:38:18

「イノセンス」 [ 映画 ]

イノセンス スタンダード版ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメントこのアイテムの詳細を見る

 去年の大晦日、Kid'sステーションでイノセンスが放送されました。大晦日に紅白も格闘技も大予言もドラえもんも見ずに、アニメを見るのが許されるのか?。うちでは特に大晦日ということにこだわりはないようで、みんな早めに寝てしまったので、私は一人で炬燵に入ってイノセンスを見ていました。

 やはり鮮烈だったのが、街の様子や近未来の生活環境などの映像表現です。首筋から電脳にコンタクトするチューブを抜き差しするシステムは以前と変わりがないところですが、それ以上に電脳にハッキングしてくる表現や、目の部分をパカッと開いて別の部品を繋げたりするところは、近未来の不気味さを感じさせてくれます。
 最も凄かったのが、ロボット製造会社ロクス・ソルス社の本社があるエトロフの都市の様子。主権国家がハッキリしないところに、世界中のワケあり企業が集まっている場所で、そこに空から侵入するところは、さながらスターウォーズ最新版に出てくる異様な都市のようでした。
 そしてロクス・ソルス社に通じていて、自ら電脳世界の住人となったキムの家も凄かったです。ありとあらゆる装飾が施された奇妙な館は、バドとトグサに仕掛けられる電脳攻撃のシュールさと相まって、とても摩訶不思議な世界を作り出しています。ストーリーとは別に、この世界を体験するだけでも、この映画を見る価値はあると言っていいでしょう。

 物語は、ロクス・ソルス社の少女型愛玩用ロボットが、所有者を惨殺し自壊する事件が発生します。人間のために作られたはずのロボットが、なぜ人間を襲い自壊してしまうのかを突き止めるため、公安9課のバトーとトグサが捜査に乗り出すところから始まります。
 事件を追っていく中で、「人間はなぜ、自分の似姿(=人形)を造ろうとするのか」という命題に、いろんな見解が提示され、人間が本来背負っている業のようなものが炙り出されます。そして、電脳ネットワークに飲み込まれ、身体機能を失って電脳意識だけの存在、ゴーストになる危うさが描かれていくのです。

 事件の結末は、愛玩用ロボットにセクサドールの役割を持たせるため、より人間に近い反応を組み込もうとしたロクス・ソルス社が、生身の少女を暴力団に誘拐させて、少女の意識をロボットに注入して売り出した事が突き止められます。助けを求める少女の意識が、愛玩用ロボットの暴走につながったというストーリーで、映像の衝撃度と比べると、物語としては、まあ平凡かなと言うところです。
 決して凡庸というわけではないのですが、何しろ映像が凄いので、どんな凄いラストが待っているのかと異常に期待を高められた結果、普通のラストでは満足できなくなってしまったのでしょう。
 お話はそう言うものでしが、そこに至る映像は圧倒的にすばらしく、ラストで海に浮かぶロクス・ソルス社の秘密工場に潜入するところなどは鳥肌もの。
 4年前に電脳の海に消えた草薙=少佐=素子が帰ってきて、ロクス・ソルス社の少女人形に乗り移って戦うところや、工場内の端末から電脳にアクセスして、奇妙な工場の管理人を倒す所など、みどころいっぱいです。

 今回バトーの相棒になった生身の刑事トグサは、家に妻と娘を残してバトーと工場に潜入しますが、ダーティー・ハリーの相棒役のように、1回限りで死ぬのかなとひやひやでした。何とか無事に帰還できて、最後には娘にお土産を渡してハッピーエンドで終わるのですが、近未来の電脳社会にも、家族の営みは変わらず息づいているというのが、この映画の救いになっているような気がしました。

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2004-11-16 19:42:33

「ソウル・オブ・マン」 [ 映画 ]

<ソウル・オブ・マン
ソウル・オブ・マンサントラ, カサンドラ・ウィルソン, イーグル・アイ・チェリー, ルー・リードSony Music House

 2003年は、アメリカの「ブルース・イヤー」で、ブルース生誕100周年を迎えて、いろんな記念行事があったそうです。それを受けて日本でもマーティン・スコセッシ制作総指揮の「THE BLUES Movie Project」が公開されました。その最初のロードショー作品「ソウル・オブ・マン」が封切られたので、観てきました。
 監督は、「パリ、テキサス」「ベルリン天使の詩」で有名になり、前作「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」でキューバ音楽の魅力を描いたヴィム・ヴェンダースです。この監督の作品は催眠効果があって、観ると必ず眠くなってくるので、十分覚悟していったのですが、今回はそうでもありませんでした。最初から最後まで、起きていました。
 ストーリーは、3人のブルースマン、ブラインド・ウイリー・ジョンソン、スキップ・ジェイムズ、J・B・ルノアーに焦点を当て、生き様をつづったものです。ドキュメンタリー・タッチで、関係者のインタビューや本人の演奏なども織り交ぜながら進んでいきます。
 1930〜40年代に活躍した人達なので、映像が残っていはずがないのですが、役者が演じているものと、本当に残っていた映像の区別がつきませんでした。まあ、そんなことは気にする必要などなく、映画に騙されて、ブルース音楽に浸っていればいいのですけど。
 本人達のオリジナル演奏の後に、現代のミュージシャン達が、カバーした演奏が披露されます。これがかっこいい!。ボニー・レイット、ルー・リード、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン、ロス・ロボス、ニック・ケイブ等トップ・ミュージシャン達が、いかに過去のブルースマンに敬意を払っているかが伺えます。
 映画館に来ていたのは、すべて男でした。私は今まで、「ブルースが好き」という女の子に会ったことがありません。ライブハウスに出ている、アマチュアミュージシャンの中には、ブルースも好きという女の子はいましたが、堅気の集には、ブルース好きはいません。
 私の友人の自称ブルースマン(41歳妻子有り)は、家族でドライブしている時、ロバート・ジョンソンのCDをかけていたら、奥さんは「気持ち悪いから止めて」、子供(女の子)からは「このCD、こわ〜い」と言われたそうです。そうです、ブルースは男の音楽なのです。
 曲を聴けば分かりますが、曲は単純で泥臭く、歌詞は「仕事がつらい」だの「おれの44マグナムをぶっ放す」だの「お母ちゃん、帰ってきてくれ」だの、まことに情けなく、かっこ悪いのです。いま流行の、オシャレで品が良くて、癒される音楽とは正反対。
 こんな暗くてみじめで下品な音楽ですが、なぜか奥行きが広くて、なんとも渋くてかっこいいのです。興味のある人や、怖いものが観てみたい人は、是非映画館に足を運んでください。

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